絵本の紹介
- 公開日
- 2019/02/12
- 更新日
- 2019/02/12
PTA
『絵本・名人伝』
原作: 中島 敦 絵・文: 小林 豊
中国の古典をベースに、だれよりも弓をきわめた男を描いた不思議な物語。主人公の紀昌(きしょう)の野心と一本気は、最初の師匠である飛衛の元で発揮され、弓矢の技を身につける。それを体得した紀昌が取った行動は、師匠飛衛に弓を引くこと。紀昌の向上心は、出世欲と征服欲に裏打ちされていたものだった。そして、次の師とした甘蠅老師の元で過ごした紀昌の変容。素手で弓矢無しで鳶を捕らえるという。都の人々からはとうてい理解されない、超越した次元であった。そして息絶えた。名人とは?どんな姿を追い求め、極めたいのか?紀昌の例は極端かも知れませんが、考えさせられます。
『桃源郷ものがたり』
作: 松居 直 絵: 蔡皋
晋の時代、武陵という貧しい漁師が舟を出して川上を上ると、山奥の美しい景色の中に迷い込んでしまう。その土地の人々は身なりは倹しいが皆仲良く助け合い落ち着いた暮らしをしているようで、漁師は夢をみているような日々を過ごす。(秦の時代、人々は戦争を避け、この土地に逃れて暮らしを始め、それ以降何百年も外の世界とは行き来していないらしい。)絵が見事で桃源郷の景色の美しさだけではなく笑顔で暮らす人々の心の豊かさが伝わってくる。人々の家々に漁師は招かれご馳走や親切なもてなしを受けるシーンも心が和む。やがて漁師は自らの家に戻って、もう一度桃源郷を訪れようとするが、願いは叶わず。こんな桃源郷に迷い込んでみたいなと思う、桃の花の香りがするような素敵な絵本です。
6-2で読みました。